明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
藤原さんは盾になるように私たちの前に立ち、口を開く。
「うちの女工になにか?」
「彼女が犯罪者の娘だとご存じですか?」
男が藤原さんにニヤニヤ笑いながら尋ねる。
「知りませんし、そうだとしても彼女が犯した罪でなければ関係ありません」
落ち着き払った声で藤原さんが言い返すと、男の表情が曇る。
「犯罪者の娘を雇った会社として悪評が立ちますよ?」
そんな……。
私がそうした非難を受けるのは仕方がないにしても、お世話になった津田紡績にまで迷惑はかけられない。
「それくらいの噂で揺らぐ会社だとお思いですか? 我が社の社長は人格者です。あなたたちの発言より社長の言葉を信じる者のほうが多いでしょう。誰に言われていわれなき悪評をバラまいているのか存じませんが、みっともないですよ」
藤原さんはそれだけ言うと振り向き「一旦中へ」と私たちを工場内へと戻した。
「すみません」
執務室に入るとすぐに深く頭を下げておわびをする。