明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「先ほども言いましたが、津田社長が徳の高い方で私もかつて助けられました。一ノ瀬さんに相談すれば社長と協議してくださるでしょう。もちろんよいほうにね。少しここで待ってください」
彼は私たちを椅子に座らせると、一旦部屋を出ていった。
「直正、ごめんね」
いまだ憂いの表情を浮かべる彼を抱きしめて声をかける。
「お母さま、大丈夫?」
「大丈夫よ」
「黒木さん、呼ぶ?」
唐突に信吾さんの名前を出されて首を傾げる。
「どうして?」
「お母さまが困ったらすぐに呼んでって。黒木さんが来るまでは、僕が守るって約束したの」
そんな約束、いつしたのだろう。
最近よくふたりで遊んでいるし、風呂も一緒のことが多いから、そのときだろうか。
「そっか。ありがとう。でも、藤原さんが助けてくれるって」
「わかった」
自分が震えているくせして私を気遣う直正は、信吾さんの優しいところを受け継いでいる。