明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
それからすぐに戻ってきた藤原さんは、私たちを人力車に乗せて本所錦糸町の本社へと向かった。
「真田さん、お久しぶりだね」
「ご無沙汰しております」
一ノ瀬さんが私たちを笑顔で迎えて、広い部屋に通してくれた。
どうやら商談を行う部屋のようだ。
「直正くん、カステラは好き?」
「好き!」
「そんな、お気遣いなく」
直正におやつまで出してくれるので慌てる。
解雇を宣言されてもおかしくないほど迷惑をかけているというのに。
「お客さま用に買ったけど余ったんだよ。真田さんも食べて。今、お茶を持ってこさせる」
恐縮したが、お菓子を出されて我慢できるほど分別はない直正は、すぐに手を伸ばしている。
「いただきますは?」
「いただきます!」
怖い思いをしたのに、すっかり笑顔が戻っていて安堵した。
一旦一ノ瀬さんも仕事に戻ったが、三十分ほどして今度は津田社長とともに戻ってきた。