明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
目を丸くして一ノ瀬さんに視線を送ると、彼はにっこり微笑み話し始める。
「横須賀でも誰もが認めるような働きっぷりだったそうだね。直正くんがいなければ、看護婦にならないかと誘ったのにと佐木が言っていたよ」
佐木さんがそこまで評価してくれていたとは。
「藤原が、財産がどうとかという声を聞いたと言っていたけど……」
一ノ瀬さんが続けざまに控えめに尋ねる。
父が事故を隠ぺいしたことは耳に入っているが、直正の父がその被害者の兄だということまでは伝わっていないようだ。
私はこれだけ誠実に対処してくれる社長や一ノ瀬さんに嘘をつきたくなくて、信吾さんとの関係や黒木家の逆鱗に触れていることなどを告白した。
「なるほど。それではあの男たちは黒木さんの息がかかった人間だったのだろうね」
すぐにすべてを察した社長は、腕を組みなにかを考えだした。
「黒木家の言い分もわからないではない。真田さんにまったく罪はないが、難しい状況だ。でも、その彼と一緒に生きていくという強い意志はあるんだね?」
「はい」