明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
社長の質問に私は即答した。
それだけはこの先なにがあっても変わらない。
「私は、津田紡績に関わったすべての人に幸せをつかんでほしいんだ。特に真田さんのようにコツコツと努力してくれる人にはね。それに一ノ瀬が採用した責任もある」
「責任だなんて。雇っていただけてどれだけ救われたか。もう十分です」
掃いて捨てるほどいる女工に、忙しい社長自らが会ってくれるなんて普通はない。
工場にしばしば足を運び、女工たちに声をかけてくれる彼らしいといえば彼らしいけれど。
「実は黒木造船とも取引があって、あちらの社長と会食をしたことがある。それとなく過激な行動は慎んでいただけるようにお願いしてみよう」
「そんな……。これ以上ご迷惑はおかけできません」
「迷惑ではないよ。我が社を支えているのは真田さんたち従業員だ。大切にしないとバチが当たる。私は、真面目に働く従業員を決して解雇などしない。だから安心しなさい」