明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
社長の言葉に不安が吹き飛んでいく。
「ありがとうございます」
「これからまだ接待という一番嫌いな仕事が残っていてね。失礼するよ」
「とんでもありません。私などにお時間を割いていただきありがとうございました」
立ち上がってお礼を言うと、社長は優しい笑みを浮かべる。
「私など、ではないよ。真田さんは我が社の大切な戦力だ。もっと自信をもって。直正くんかわいいね。うちは男の子と女の子のふたりでやかましくてたまらない。もちろんかわいいけどね。それでは」
背筋をピンと伸ばして歩く社長は、若いのに威厳がある。
その様子がどこか信吾さんと似ていた。
その晩、日勤だった信吾さんは日が暮れた頃に帰ってきた。
「おかえりなさいませ」
「おかえりなしゃいませー」
私が迎える横で直正も真似しているが舌が回っていない。
「ただいま」
それでも信吾さんはうれしそうに微笑み、直正を抱き上げた。