明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「できれば、実家との縁は切らずにと思っていたが、八重や直正を傷つけてまでそこにこだわる必要はない」
「待ってください。それって……」
「駆け落ちをもう一度するつもりはない。でも、俺は黒木の家より八重と直正をとる。爵位もいらない。そんなものがなくても、必ず幸せにする」
彼は二度も私のためにすべてを捨てようとしてくれている。
でも、本当にそれでいいのかためらわれる。
「八重」
それに気づいたのか、彼は少し大きな声で私を呼ぶ。
「俺を不幸にしないでくれと前にも言ったはずだ。全力でふたりを幸せにするから、俺をひとりにしないでくれ」
「信吾さん……」
もし私が身を引いたとして……。
彼が実家に戻り、望まない縁談を押し付けられて家族ができても、この先彼の心はずっと孤独なのかもしれない。
私が清水家に嫁ぐことになったとき、そう感じたように。
「信吾さんについていきます」
「うん。ありがとう」
彼は欣喜の表情を浮かべ私を抱き寄せたあと、「愛してる」と囁き唇を重ねた。