明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
そうしたときに悲しそうな顔をすることもあり、随分寂しい思いをさせてきたと思う。
私は直正を強く抱きしめてから口を開く。
「黒木さんが直正の本当のお父さまなの。わけがあってどうしても一緒にいられなくて……。でも、黒木さんは直正と一緒に生きていきたいと思ってる。もちろん私も。でも、直正が嫌なら――」
「嫌じゃないよ」
無理強いをしないと信吾さんとの間で決めていたので、直正にも選択肢を与えようとすると、途中でそんな返事が返ってきた。
信吾さんは目を見開き、直正の背中を凝視している。
「ずっと一緒にいてくれるの?」
顔を隠したまま、ぼそぼそとこぼす直正の発言に少し驚く。
「直正がいいのならずっと一緒にいる。もう二度と離れない」
信吾さんはゆっくりとそしてはっきりと口にした。
「お母さまを守ってくれる?」
次に放った直正の言葉に目頭が熱くなる。
彼にはつらい思いばかりをさせてきた。
守るべきは私ではなく、直正なのに。