明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「もちろんだ。直正も八重も守る。初めて会ったとき、直正にも怖い思いをさせたね。本当にすまない」
サーベルを向けたことを言っているのだ。
けれど、信吾さんにも複雑な感情があり、部下の前でもあったし、ああするしかなかったのだと思う。
しかし最近の直正を見ていると、もう彼に対して怖いというような感情は抱いてはいないようだけど、どうかな。
「直正。顔を見せてくれないか? きちんと謝りたい」
信吾さんが伝えると、直正は首を横に振っている。
やはり嫌なの?
「はじゅかしい」
小声で囁いた直正に、信吾さんと目を合わせて呆然とする。
「恥ずかしいって、黒木さんの顔を見るのが?」
「お父さまだもん」
直正がそう口にした瞬間、信吾さんの顔がゆがみ、左手で顔を押さえた。
感極まって泣きそうなのだ。
「そっか。お父さまは初めましてだものね。でも、黒木さんはいつもと変わりないよ」