明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

本来なら、男性とふたりでこうした散策をしてはならないときつくくぎを刺されている。

それどころか、ちょっとした会話を交わすことも、文を交換することも禁止なのだ。


だから父に見つかりでもしたら、大目玉を食らうだろう。

けれども、もしそうなったとしても黒木さんとふたりの時間を持ちたかった。


女学校で理科がさっぱりわからないと話すと、黒木さんは白い歯を見せて笑う。
どうやら彼は得意だったようだ。


「それでは、お友だちに教わるのですか?」
「それがお友だちもさっぱりで」
「あはは」


声をあげて笑う彼につられて、私まで。
しかし、大笑いなどいつもは許されないので、慌てて口元を押さえた。


「笑っても、いけないと?」

「そう、ですね。口を大きく開くのはよろしくないと。失礼しました」

「子爵令嬢というのも大変なのですね。ですが私は、笑っている八重さんが好きですよ。私と一緒のときくらいは、思う存分どうぞ」
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