明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

どうぞ、と言われてできるものではないが、背伸びはいらないと言われているのは本当だと伝わってきて安心した。


「警察官のお仕事はお忙しいのでしょう?」

「そうですね。日比谷のような大事件はいつも起こるわけではありませんが、小さな揉め事や問題は四六時中ありますから。事件は小さくても、人が亡くなることもあれば取り返しのつかない大けがをすることもあるんです」


悲しげな表情で小さなため息をつく彼は、視線を宙に舞わせてなにかを考えているようだ。


「黒木さんのような方がいらっしゃるから、私たちは幸せに暮らせるのですね。ですが、またけがをされないようにしてください」
「ありがとうございます」


少し緊張が漂った気がした彼の表情は瞬時になごみ、胸を撫で下ろした。
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