明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
それからふたりでかき氷を食べた。
キンキンに冷えた氷のせいで頭が痛くなるほどだったが、黒木さんとふたりで笑い合いながら食べたこの味は、ずっと忘れないだろう。
「かき氷なんて久しぶりです。隣に八重さんがいてくれるから、一層おいしい」
「私もです」
暴漢から助けてくれた警察官と、こんなに楽しい時間が持てるなんて思ってもいなかった。
それから、高級ホテルのレストランに足を運んだ。
このような高級店も父に連れられて訪れたことはあるが、マナーが間違っていないか目を光らされていたので、正直味なんて覚えていない。
しかし今日は、そんな窮屈さはまるでない。
「牛肉のステーキがおいしいと聞きまして。でも、ひとりで来るもの寂しいし、同僚ときたらまずくなりそうで躊躇していたんですよ」
「まずいだなんて」
彼の言葉はいちいち私をなごませてくれる。
牛肉を口にするときの調理法は牛鍋が圧倒的に多いが、ここのステーキは臭みもなくとにかく柔らかい。