明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

それからふたりでかき氷を食べた。
キンキンに冷えた氷のせいで頭が痛くなるほどだったが、黒木さんとふたりで笑い合いながら食べたこの味は、ずっと忘れないだろう。

「かき氷なんて久しぶりです。隣に八重さんがいてくれるから、一層おいしい」
「私もです」


暴漢から助けてくれた警察官と、こんなに楽しい時間が持てるなんて思ってもいなかった。


それから、高級ホテルのレストランに足を運んだ。

このような高級店も父に連れられて訪れたことはあるが、マナーが間違っていないか目を光らされていたので、正直味なんて覚えていない。

しかし今日は、そんな窮屈さはまるでない。


「牛肉のステーキがおいしいと聞きまして。でも、ひとりで来るもの寂しいし、同僚ときたらまずくなりそうで躊躇していたんですよ」
「まずいだなんて」


彼の言葉はいちいち私をなごませてくれる。

牛肉を口にするときの調理法は牛鍋が圧倒的に多いが、ここのステーキは臭みもなくとにかく柔らかい。
< 38 / 284 >

この作品をシェア

pagetop