明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

しかし今日は少し緊張気味だ。
なぜなら、女学校とは関係がない外部の良家の人が見学できる授業参観だからだ。

こうした行事は時々あるのだが、良家の方々は授業の光景を見ているのではなく、嫁探しをしている。

しかし、学問が秀でているなどという基準で選ぶことはなく、子をたくさん産めそうな丈夫な体をしているかとか、器量がよいかといったことばかりが重視される。

いわゆる〝美人〟ほど早く中退して、嫁入りする傾向があるのはこのせいだ。

そのため、卒業まで売れ残ると〝卒業面〟なんていう不名誉な称号をいただく羽目になる。

まだ結婚したくないのに、卒業面と言われるのもどうも……。
実に理不尽ではあるが、それが現実だ。


そんな複雑な気持ちを持て余しながら、心なしかいつもより顔を伏せ気味にしていた。

黒木さんに心奪われている私は、間違っても嫁探しをする他の家の目に留まりたくはなかったからだ。
< 44 / 284 >

この作品をシェア

pagetop