My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
「それは古い考えにとらわれているからではありません。皆、平民の出である貴方様に親しみを抱いているからです」
驚く王子に、クラヴィスさんが微笑みながら続ける。
「ツェリウス殿下。貴方様はその生い立ちから、デュックス様には知りえない平民の苦しみ、そして王子としての苦しみ、両方を知っておいでだ。だからこそ、デュックス派の者達は貴方様を恐れているのですよ」
それを聞き、ドナが自分のことのように目を輝かせた。
「ほらな! お前なら皆に好かれる立派な王様になれるって。モリスたちもそう思うだろ?」
茫然としながらも、王子はモリスちゃんたちに視線を向けた。
「うん! ツェリが王様になったらモリスも嬉しい!」
「なんか面白い国になりそうだよな」
「うん。お菓子がいっぱいの楽しい国になりそう!」
モリスちゃんに続いて、アドリー君とリビィ君が満面の笑みで言う。
――お菓子と言えば、朝たくさんのお菓子を目の前にした子供たちは思った通り大喜びしたそうだ。恥ずかしながら、私は寝ていてその場は見られなかったけれど……。
「お前ら……」
王子の瞳が再び潤むのを見た。
ドナが満足げな表情で言う。
「それにさ、お前が王様になれば、アタシたちみたいな親無しももう少し楽に暮らせるような国にしてくれるだろ?」
「! ――あぁ。絶対に」
王子が、初めて大きくはっきりと頷いた。ドナから受け取った笛をしっかりと握りしめて。
その顔が急に“王子様”に見えた。――それが、彼が覚悟を決めた瞬間だったのかもしれない。
「ドナ姉ちゃんは、ツェリが来てくれるまで俺たちが守るよ。だから絶対に迎えに来いよな」
そう言ったのはノービス一家の長男であるトム君。
「トム……色々と悪かった。僕がモリスにお菓子の話なんかしたばっかりに」
トム君が首を横に振る。
「悪いことをしたのは俺だから」
その会話で、トム君がお菓子泥棒をしたそもそものきっかけがわかった気がした。
「ツェリこそ角折っちまって、平気だったのか?」
「あぁ。あれは生え変わるもんだから、折ったって痛みも何もないんだ」
そう聞いて、トム君だけでなく皆がほっとした顔をした。
そして、王子は再びドナをまっすぐに見つめる。
その瞳にもう迷いは無かった。
「ドナ。僕、立派な王になって絶対にドナを迎えに来るから。だから、待っていてくれ」
ドナはそんなツェリウス王子を眩しげに見つめ、それから少し頬を染めしっかりと頷いた。