My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
アルさんの話だと人違いとわかり早々にどこかへ行ってしまったはず。なぜ再び戻ってきたのだろう。
更に近付いて、血の気が引いた。――クラヴィスさんの目の前に、ツェリが居た。
「クラヴィスさん駄目ーー!!」
私は思わず叫んでいた。
クラヴィスさんがぎょっとした顔でこちらを見上げる。
直後風が霧散し、私とアルさんは丁度両者の真ん中に降り立った。
「――あ、貴方方は。なぜ」
クラヴィスさんが酷く驚いた様子で私とアルさんとを見つめた。いきなり空から降りてきたのだ。驚かない方がおかしい。
背後にいるツェリも心なしかびっくりしているように見えた。
「そりゃこっちの台詞だ。お前さん、ここにはもう用は無かったんじゃないのか」
アルさんが普段よりも強い口調で訊き返す。するとクラヴィスさんは明らかに動揺したそぶりを見せた。
私はツェリを庇うように両手を広げる。
「クラヴィスさんお願いします! この子を退治しないでください!!」
「え?」
「この子は、ただドナ達を守っているだけなんです! だから」
「いえ、私は……」
クラヴィスさんが言いにくそうに口を開いた、そのときだ。
「カノン!?」
高い声が上がった。クラヴィスさんの向こうにドナとトム君の姿があった。
二人は、私たちがこの場にいることにとても驚いているようだ。空を飛んできた私たちの方が到着が早かったのだ。
「どうやって……そうか、術士って言ってたもんな。ツェリから離れろ!」
ドナが出会ったときと同じ、敵意むき出しの目をこちらに向け怒鳴る。