拝啓ヒトラーさん


「だって聞いたんだよ。春さんみたく、一回読んだ本は全部記憶しちゃう人の話。その人、東大受かったのに進学後すぐにインドに行って、それっきり消息不明になったんだって」

「だから春も消息不明になるかもって?」

「うん。春さんってすぐ1人でウジウジ考えて決めちゃうから、消える時も何も言わなさそうじゃん」

「ウジウジしてて悪かったね」

広の辞書には「デリカシー」という言葉も載っていないようだ。

「春さんさ、大須賀先生とどんなこと話すの?」

「どんなって、別に。向こうの大学の課題のことだったり、留学する場合のホストファミリーのことだったり」

モゴモゴと広の質問に答えながら思い出す。
14日前の昼休みに大須賀先生が話してくれた内容。

アメリカの大学は授業時間は短いんだ。
ただ、課題がとても多いから学生はみんな授業後に自分で研究していくスタイルだよ。
前川さん、本当にアメリカの大学は考えてないの?
研究したい分野とか、たくさんあるだろう?
航空宇宙工学とかなら、常に開発の最先端の現場を見られるんだよ。
数学とかは?数学ならハーバード大学がいいだろうけど。
前川さん、2年生の時ラテン文学について調べてた時もあったよね?そういうのは?
海洋学だったら、養殖分野は日本の大学の方が良いかもしれない。でも、地学に興味があるんだったらチューリッヒ工科大とか。

前川さん、なにかやりたいことはないの?



< 16 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop