月夜に笑った悪魔
「……あっためてくれんの?」
握った手にきゅっと軽く力が入る。
ついさっきまで荒かった呼吸が、少しよくなっていた。
彼はじっと私を見つめてきて、私は「うん」と目を見て頷く。
そうしたあと。
「美鈴さん、若頭いました?さっき雷注意報出たので──」
聞こえてきたのは春樹さんの声。
振り向けば、屋上のドアが開いて彼はそこにいた。
「わっ!大丈夫ですか!?お2人とも、風邪ひきますからはやく中に入ってください!」
春樹さんは私と暁を見ると、驚いた表情。
それも無理もない。
傘を渡されたのにこんなにびしょ濡れなんだから。
「行こう」
暁の手を引っ張って、中へ。
ぽたぽたと垂れる雫。
このまま中へと入っても、病院内を濡らすことになるからよくなかったかもしれない。
「今タオル借りてきます……!」
すぐに走っていく春樹さん。
その背中を、暁は「春樹」と呼びとめた。