月夜に笑った悪魔






お風呂を借りて、スウエットを着て。
濡れた髪をタオルで拭いてドキドキしながら脱衣所を出れば、部屋が真っ暗でびっくり。


リビングも、どこの部屋も電気はついていない。
部屋を照らすのは、月明かりのみ。




……暁、もしかして出かけた?
いないのかな……。


そう思いながらも電気のスイッチを探す。

すると、ふと強い風を感じて。





リビングの大きな窓のほうへと目を向ければ……ベランダに、彼はいた。





ベランダの手すりに肘をついて、煙を吐き出す彼。
彼の手には、タバコ。




風に乗って彼が吐いた煙がこっちまでくる。


もちろん、びっくりした。
喫煙者だってこの時はじめて知ったから。


声をかけようとしたけれど、すぐに声が出ない。






タバコを片手にしている彼はいつも以上に大人びて見えて、
月の光に照らされる彼はきれいだと思った。





……きれいだけど、どこか同時に怖さも感じる。
きれいすぎて怖い。



すぐにいなくなってしまうんじゃないかと思うような儚さがどこかある。


月が見えなくなれば、暁も闇に消えてしまいそうな……そんな感じ。


一気に押し寄せてくる不安。

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