月夜に笑った悪魔
素直に『離れたくない』って言えば可愛かったのかも……。
なんて思ってももう遅い。
「じゃあ、ちゃんと俺のカラダの隅々まであっためて」
なにを言われるかと思えば、上から降ってきた声。
その声は、嫌がってるような感じではなかった。
「……わかった」
頷いて返事をすると、彼はまた背中に手をまわして強く抱きしめてくれる。
こんな天気でもまだ隠れていない月。
部屋を照らしているのは月明かりと、一瞬空に走る稲妻のみ。
雷の音はまだ近くで聞こえるし怖いけど……その恐怖はしだいにドキドキへと変わっていく。
なんか、自分の心臓の音のほうがうるさいような……。
まるで、耳に心臓があるんじゃないかと思うくらい。
雷よりもそっちの音のほうが気になってきて、心臓の鼓動は加速するばかり。
……なにか言わないと。
なにか言わないと、心臓の音が聞こえちゃう。
必死に会話を探して頭を巡らせると、思い出したこと。