月夜に笑った悪魔
自分が無力すぎて悔しい。
じわりと熱くなる目の奥。
涙が溜まっていくから、こぼれ落ちないように必死にこらえる。
……なんとかする方法、考えなくちゃ。
そうだ、スマホ……スマホで連絡を……。
幸いまだスマホは奪われていない。
だから助けは求められる。
暁の手を離し、私はスマホの画面をつけた。
それと同時、運転席のドアが開いて乗り込んできたさっきの女性。
音がして反射的に目を向ければ、ばちっと合った視線。
私は、すぐに持っていたスマホを背中へと隠した。
ドクドクと早く動く心臓。
手に滲む汗。
ここでスマホまで取りあげられたら……。
「もういいですよ」
バタン、と車のドアが閉められると女性は2回手を叩いた。