月夜に笑った悪魔


「ゆっくり飲んでね」
「……絶対こぼれる」


「こぼしたら拭いてあげるから」
「……溺れる」


「そんな勢いよくやらないよ!?」
「…………」


暁は、なにか不満があるような顔。
ペットボトルに目を向けて、次に私に目を向ける。


いったいなにが言いたいのか。
水じゃなくてお茶がいい、とかそんなワガママなこと言わないよね?



「口移しじゃないと飲めねぇ」
「へっ」


聞こえてきた声に間抜けな声が漏れて、手から滑り落ちそうになるペットボトル。


慌ててもう片方の手でペットボトルをつかみ、なんとか……こぼさずにはすんだ。


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