月夜に笑った悪魔


く、口移し……って。


「元気じゃんか……!」


そんなこと言えるくらいなら、充分元気だろう。
暁はまだ体が辛いかなって思って飲ませてあげようと思ってたんだけど……。



「この状態、どう見ても元気じゃねぇだろ。体動かねぇんだけど」


彼は、まだ指もちゃんと動かせない状態。
起き上がろうとしても途中で力は抜け、また座席シートに背中をつけた。




確かに、まだちゃんと回復はしていない。
けど……、こんな状況の中そんなことするとか……。


だいたい、口移しなんてただ暁がキスしたいだけなんじゃ!?


「早く」


急かされる私。


「ば、バカじゃないの。早く飲んでよ」
「ヤダ。口移しじゃないと飲めねぇ」


ペットボトルの飲み口をまた近づければ、彼は口を閉じた。

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