月夜に笑った悪魔


なんというワガママ。
こんな時にもワガママを言うなんてさすがというか、バカというか……。



ムカついて……ヤケになった。





私はペットボトルの飲み口にくちをつけ、水を含み。
そしてそのまま彼に顔を近づけ、重ねた唇。


一気に水を入れないように、少しずつ彼の口へと流し込む。


ごくん、とゆっくり動く喉。


口内の水をぜんぶ飲ませたところで離れようとしたが……。




急に、口内に差し込まれた舌。





「……っ!!」


やっぱり、元気じゃんか!!


私は、舌を絡めずにすぐに離れた。
うしろに下がれば助手席の座席シートにぶつけた頭。


……痛くはない。



「足んねぇ。もっとちょーだい」


口移しでも口の端から垂れる水。
私を見つめる彼は色っぽく見えて、ドキリとした。

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