月夜に笑った悪魔



***


7月12日(日)、22時。




「気をつけてね、美鈴ちゃん。あたしたちも美鈴ちゃんが行ったあとすぐに行くし、あっちに到着したら入口付近にいる予定だから、なにかあったらすぐ連絡するのよ」


金髪のロングヘアをひとつにまとめて、柄物のシャツに身を包んでいる大柳吉さんが心配そうにする。


「はい、行ってきます!」


私は返事をして車に乗ろうとした、が。
パシッと手をつかまれて、引きとめられた。





私の手をつかんだのは、暁で。



「もし、アレなくしても……俺のことだけ考えて、頭ん中俺だけでいっぱいにして、“暁大好き”って言ったらすぐ助けてやるよ」


彼は口角を上げて笑うと、私が腕につけていたバングルをはずした。


桜の花びらが刻印された和柄のバングル。

それは、一条組の家ではじめて目覚めた朝に暁につけられて、返さなくていいと言われたからそのままずっと毎日つけていたもの。

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