月夜に笑った悪魔


「じゃあな」


彼はひらひらと手を振るから、私は「なにバカなこと言ってるの!」とだけ返して今度こそ車に乗った。







──車に乗ること30分ほどで、ある場所の近くに到着。



その目的地周辺で車をおりて、歩いて向かう。
慣れない高いヒールで歩いて、建物の中へ。


エントランスで身分証をスタッフに確認された時は、それはもうヒヤヒヤした。


私が持ってきたのは、偽造身分証明書だから。
これは暁が用意したもので、私の年齢がうそのものになっている。


身分証明書を確認されたあとは、お金を払って。
とりあえず、第一関門は突破。






ほっと息をついてから、
いよいよ、会場の中へ……。



扉の中へと足を踏み入れた瞬間、聞こえてきたのは耳を塞ぎたくなるような大きな音。


会場内は薄暗く、ミラーボールがキラキラ輝く。
人は、とにかくたくさん。


聞こえてくる音楽に合わせて踊っている人、ジャンプしている男女。

……ものすごく、盛り上がってる。




まさか、自分がこんなところに来ることになるとは思ってもいなかった。




私が来ているのは──クラブ。


暁が手伝ってほしいというシゴトのために、今日ここへと来たんだ。

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