月夜に笑った悪魔


そんなはやとも、前に聞いた話によれば家庭環境が複雑みたいで、家出をしていたみたい。


まぁ、知っているのはそれだけ。
私も“すず”とだけ名乗っていたから、お互い本名も年齢も知らない。


ある日突然、なぜかはやとは公園に来なくなって、私はそのあとに和正と出会い一緒に暮らすことになったからもう絶対に会うこともないと思っていたけど……まさかここで再会するなんて。






「すっごい久しぶり!っていうか、私のことなんでわかったの!?」


私がはやとと出会ったあの時は中学1年生。
メイクしている姿なんて1回も見せていない。今は服装も顔も、あの頃とはまったくちがうはずなのに……。


「聞いたことある声だなーって思って!まじびっくりした!」


笑顔で答える彼。
……声でわかるものなのか。






「すず、よかったらこのあとあっちで話でもどう?再会祝いに!」


はやとがそう言ったすぐあと──。
どこかで嗅いだことのある匂いが、鼻腔に届く。


それとほぼ同時に感じた、人の気配。


誰かがはやとの隣に来て、グラスをカウンターへと置いた。

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