月夜に笑った悪魔


その人を見て……私は、すぐに誰だかわかった。


服装は黒いシャツに、柄物のネクタイ、黒いズボン。
黒髪はオールバックになっていて、サングラスをかけている男性。


いつもの桜のピアスはないけど──この人は、暁だと確信。







無駄に色気が出ているし……この嗅いだことのある匂いは、ぜったい暁だ。


一条組だってバレるとクスリを売買してる人に逃げられるかもしれないし……なにかない限り、まだ会場には来ないと思ってたんだけど、もう来たんだ。


……バレない?
その無駄に出てる色気をどうにかしないと私以外にも一条暁がいる、ってわかっちゃうよ?


なんで隣に来たの?
……あ、もしかして、そんなことしてないでシゴトしろって伝えに来たとか?


こっちの話は盗聴器でぜんぶ暁と吉さんに聞こえてるんだよね。




いけないいけない。
はやとと話したい気持ちは少しあるけど、ちゃとシゴトしないと。




「ごめん、はやと。私、やることあるから行くね」


私は心の中でも謝ってから、小走りでこの場を去った。

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