月夜に笑った悪魔


「聞きたいことってなんだい?」


聞かれて、すぐに言葉が出てこない。
私は、なんて聞き出そうか考えていなかった。


……なんて聞くのが1番いいのか。
もう、直で聞いてみる?






「あの、実は、気持ちよくなれるクスリがここで買えるって噂を耳にしまして……。私、どうしてもそれがほしくて……。
お兄さん、さっきなにかほかの人に渡してたから知ってるかなぁって思って声をかけました」



私は男性の袖をつかんで、上目遣いで見つめた。


自分にできる限りの演技。
本当はあまり近づきたくないけど、少し距離もつめる。


知らないと言われてしまえば、それまで。
本当にこの人が販売者じゃないのかもしれないから、ほかの人をあたろうとしていたんだが……




「……き、気持ちよくなれるクスリがほしいの?」


次の言葉は、否定するような言葉ではなかった。
……これは、確実に知っている。


「はい、どうしてもほしいんです……」


私がそう返すと、男性は私との距離をさらにつめて。



「……VIP取ってあるから、2人っきりでゆっくり話そうか」


耳元で、小さな声で言った。

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