月夜に笑った悪魔
じっと見つめられるから、私は小さく頷く。
それを確認した男性は、ポケットからなにかを取り出して。
「今日はたくさん売れたから今の手持ちはこれしかないんだけど……ごめんね。これはあげるよ」
私へと手渡す。
渡されたものは、透明な小袋。
その中に入っていたのは、カラフルなカプセルのクスリで。
……いかにも、怪しいものだった。
これは、ぜったい違法のクスリ。
“今日はたくさん売れたから”という言葉もひっかかるし……この人が、クスリの販売者。
探してた人が見つかった。
見つかったのに……暁と吉さんに伝える手段がない。
「あ、ありがとうございます……!でもすみません、少しだけ待ってもらってもいいですか?ショルダーバッグを向こうに忘れてきてしまったみたいで……すぐ持ってきて、お金払います!」
立ち上がろうとすれば、強くつかまれた手。
男性は一気に私との距離をつめて、密着。