月夜に笑った悪魔


桃のイラストがかいてあるから……桃の缶ジュース、だろうか。
見ず知らずの私を気にしてくれるなんて、すごくいい人だ。


「すぐに辛いことなんて忘れて楽になれるから、ぐいっと飲んだほうがいい!ぐいっと!」


さらにずいっと差し出されて、私はそれをお礼を言って受け取った。


もう、美味しいものでも飲んで今すぐに忘れたい。
……楽になりたいよ。


カシュッ、と炭酸の抜ける音。
缶ジュースを開ければ、それを一気に喉へと流し込んだ。


勢いよく飲んだから口元にジュースがたれて、それをぐいっと自分の手で拭う。


さっぱりとした桃の味。
一気飲みするのは気持ちのいいものだ。


「おおっ!いい飲みっぷりだねぇ!もう1本いっておくかい?」


今飲んだものと同じ桃の缶ジュースを手渡してくれるおじさん。
世の中には優しい人もいるもんだ。


「ありがとうございます」


私はそれをありがたく受け取って、再び一気飲み。

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