トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜


「そうだ!奈月に見せたい物があるのっ♪」

「えっ?なになに?」

流奈は「よいしょ」なんて声をかけながら立ち上がっていて、そんな姿の流奈も悪くないと心から思った。

「みてみて!これが母子手帳〜」

ヤンキーブランドのリュックから大きなキルトのケースを持ち出してくると、それを開けながら私の前に広げた。

「本当だぁ!!!うぁーこれね!見せて、って赤ちゃん生まれたら沢山予防接種しなくちゃいけないんだね」

「そうそう。検診に、予防接種と色々あるよ」

二人で一緒に覗き込んでいるのは、流奈のお腹の中にいる赤ちゃんの母子手帳。

そして、検診の度に、貰えるエコー写真。

私の隣で一生懸命説明をしてくれている流奈

誰がこんな流奈を想像しただろうか……

嬉しそうに、幸せそうに微笑んでる

こんな流奈の笑顔を見たのはきっと初めてな気がする。

目の前に開かれた母子手帳を眺めるのはもちろん幸せなことだったが、私は何より幸せそうな流奈を見ているのも幸せだった。


そしてなんだかとても温かい……。

たまに会える流奈との時間で私は癒されていた

何よりも早くお腹の子と会いたくて仕方がなかった。

雄也くんとは時々喧嘩しながらもうまくやっているみたいだが、幼い二人が親になる。どこか夢のような話だけど、幸せになってほしいと切に願い続けていた。

私はというと、ダブる事なく無事に2年生に上がれていた。

残念ながら仲がよかった木本とは違うクラスになってしまったが、2年生になったからといって別に大きな変化はなく授業は相変わらず寝て過ごしていた。

とりあえず授業に出席すればカウントされるから 我慢して椅子に座ってれば良かった。

進学など先のことは考えておらず、夢なんてものは見つけることは不可能で普通に生きているだけで精一杯。

いつしか私は時間が過ぎるのを待ち続けながら高校生活を送っていた。

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