トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜
大人しくて心地よかった太陽も、熱い光をふりまき始めた頃、バイト行く前に一本の着信を知らせていた。
ーー流奈ーー
「おお。流奈~どした?」
いつも思うのだが、私たちの電話の第一声目は「どした?」になってしまうのだ。
必要以上にベタベタした友情ではない私たちは、どちらから着信を知らせれば何かあったとしか思えないのだ。
「もうね、生まれそう~!!予定日まではあと少しあるんだけどさ、検診行ったらもう子宮口開いて来ていてさ~」
明るく元気に話している流奈、不安はないのだろうか、怖くはないのだろうか……そんなことを思いながら「分かった!!明日バイトもないから行くよ」そうすぐさま答えている自分がいた。
「悪いね、ありがとう!!」
生まれる前に流奈に会って頑張れと伝えたい……
電話を切ると、バイト先へと向かいながら、今日が給料日なことを思い出ししめしめとニヤついている自分がいる。
そして何より、少しだけ流奈も心配だった。
いくらあんなに気合いが入っていて気の強い流奈だって、16歳という若さで子供を出産するということは不安に違いない。
それに、細すぎる母体でリスクがあるらしいのだから、もちろん私だって不安でしょうがない。
それでも、今私が出来ることは、最後に笑顔で笑わせることだけだろう。
明日のことを考えるだけでドキドキしながらも、私はいつも通りバイトに入り業務をこなし、流奈に会えるのが楽しみな自分がいた。