トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜
「目覚めよしっ!!」
いつも学校へ行くよりもすんなり起きて淡々と支度が出来上がった自分
鏡で見ると、びっくりするくらい表情がはつらつしている。
「行ってきまーす!!!」
そう、わざわざリビングに立ち寄りそう叫ぶと、一斉に家族から注目を浴びる
「あら、行ってらっしゃい!」母親のそんな返答に笑顔で「はーい」なんて言って見せると自分のそんな行動はやっぱり気持ち悪くて、そしてなぜか身震いもした。
楽しかった、なぜだかワクワクしている自分もいた。
もしかしたらお腹の大きい流奈を見るのはこれが最後かもしれないと思うと少しだけ寂しい気持ちになる。
そして今日は平日だ。
でも今日行かなければ、明日もし流奈が産気づいてしまったら、私は行かなかったことに後悔するに違いないと思ったから。
学校には向かわず、足早で銀行のATMへ直行すると給料日で入ったばかりのお金を引き出し、流奈の住んでいる最寄りの駅まで急いだ。
「ここ、ここ」
駅に着くと一目散に向かったのは薬局。
新生児用のオムツの前に立ち尽くしながら店員さんを呼んでしまう
「生まれたばかりの赤ちゃんは新生児用で大丈夫ですよね?」
「はい、こちらになります。メーカーによって色々違うのですが……」
確かに店員さんの言う通り、値段もバラバラだ。
そして思っていたよりオムツも高い。
銀行から多く引き出して置いて良かったと胸を撫で下ろしながら、オムツを抱えてレジへと向かった。
制服をきた高校生がオムツを持っている姿はとてもシュールだったと思うが、
さっきのおばさんは会計を済ませた私に「重いからねー!気をつけてよ」と声をかけてくれた。
「ありがとうございます」
私は素直に見ず知らずのおばさんに笑顔でお礼を言っていた。
オムツのパッケージに描かれている天使のような赤ちゃんを見ているだけで、どこか優しい気持ちになってしまう。
そしてオムツを抱えたまま果物屋さんの前を通りかかると迷わずそこに足を踏み入れた。
"赤ちゃんの為にビタミンを取らないとね"
私の自己流の栄養学と、よくわからない知識と共にカゴにどんどん入れていく。
買い物を終えた時には両手にいっぱい荷物を抱えていた。
「よし!!これで完璧〜!」
両手いっぱいの荷物の多さになんだかやっぱり幸せな気持ちになる。
流奈はきっと喜んでくれるに違いない。
そう考えれば考えるほど、私の足は凄い速さで動きあっという間に流奈の地元に着いた。