トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜
「聞いてよ奈月!こないださ、ご飯炊いたら炊飯器壊れたんだけど、で、お母さんと喧嘩勃発っ!!」
「え?流奈ご飯炊いたの始めて?んで、なんで壊れた?」
「水入れるの忘れた」
失笑していた。口元が緩みながら話す流奈をみて少し心配になったのは少なからずあった。
「水を入れないで炊くバカがどこにいるのよ!!」
キッチンの方から、おばちゃんの声が聞こえてきて「教えてくれないからいけないんじゃん!」
「いや、小学生でも分かるわ」
そんなやり取りを見ながら、本気で話す流奈を見てこれから先、毎日ご飯作れるのかな……
流奈の炊事をしてる姿が全く想像できないと不安になる。
「実家にいる間少しづつ料理頑張るんだよ」
「奈月もお母さんに教わった?」
「いや、全然!独学だよ、教えてもらう時間もなく妹が入院しちゃったから」
「……そっかぁ」
一瞬だけ、悲しい空気が流れる。
確かに、私は誰に教えられることもなく、自ら勉強して作っていたんだな……なんてふと思ってしまう自分がいる。
ふと視線を感じれば、おばさんが私に優しい眼差しで見つめていた。きっと何か察したに違いない……そう思わせるような優しい目をしていた。
「そうだ!!ね!奈月ちゃん!今日うちもんじゃ焼きやるから食べて行きなよ!」
「え?いや……急に悪いです!夕方に帰るのでほんと大丈夫です。」
「なんでよ!奈月!今日雄也も会社の付き合いで夕飯いらないみたいだし」
「けど……」
「たまにはいいじゃん!ね?」
「そうよ!奈月ちゃん。食べてってっ」
「すみません……ありがとうございます。私もんじゃって初めて食べます」
そう、私はみんなで囲うようなご飯はあまり知らない。
お好み焼きはもういつ食べたか思い出せない。
お母さんとお父さんがまだ仲良かった頃かな……そうずっと昔の記憶。
少し切ない気持ちになりそうなところで我に返った。