トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜
「お父さんも帰って来たことだし、そろそろ作ろっか。一緒に」
そう流奈と部屋で盛り上がっている時に、おばちゃんが私を誘ってくれた。
「え、あたしはやらないよ!!」
そう寝そべって言葉を返す流奈に「やらなくていいわよ奈月ちゃん行こう」と笑いながらおばちゃんは言いながら私をキッチンへ案内してくれた
人の家の台所に立つのはとても新鮮でワクワクしていた。
制服の私に気遣い「こんなもので良ければ……」と、おばちゃんのエプロンを借りて私は慣れた手つきで後ろでちょうちょ結びをする。
「ククククッ……」
そんな笑い声が聞こえたかと思えば、流奈が後ろで私のエプロン姿を見て笑っていた。
「なによ~!!」
「なんかさ、奈月が着るとエロイよね」なんて笑いながらバカにしてくる。
「うるっさ~流奈も手伝いなよ~」
せかせか動くおばちゃんを見ながら、促してみたが、聞こえているはずなのにちゃっかりスルーして鼻歌が聞こえてくる。
私はそんな流奈を見て思わず笑い、手を洗うとキッチンに急いで戻る。
おばちゃんは時短で出来るようなメニューをパパッと作ってみせてくれた。
料理を誰にも教わっていない私のことを気遣ってくれたのだろうか、それは今までに見たことのないメニューばかりで、なんだか凄く嬉しかった。
「おばちゃんね、居酒屋メニューが好きなの」
ふふふと笑い優しい口調で色々なレシピを私に教えてくれた。
「奈月ちゃん!もんじゃはウスターソースの塩梅が大事だからね〜」
「ウスターソース?ですか?」
「家で使わない?」
「中濃ソースしか使ったことないです」
サラサラとしたソースを使ったのはこの日初めてだった。全てが新鮮で、料理を楽しんでしていたのは今日までなかったのかもしれない。
「ねーねー!もんじゃの生地できた?まだなの~?」
時折いいタイミングで覗き込む流奈の手を見るとベビースターラーメンが握られていた。
「出来たけど……」
「よっしゃーじゃあ始めるか!」
リビングのテーブルには、ホットプレートが置かれていて、気づいた時には流奈のお父さんは席についていて、ビールを飲み始めていて上機嫌そうにつまみを食べていた。
こうして人生初のもんじゃ焼きがスタートした。