トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜


本当にテレパシーというものがあるのだろうかと思ってしまう。

左手の上に置かれている携帯を見ながら、鳴り止まない着信を鼓動と共に聞く。

酷く動揺しているが、流奈から連絡を拒否してからもう1年は経つだろう。

今きっとこの電話にでなかったらもう二度と流奈と話せなくなるようなそんな気がして、右手にまだ握ったままの第二ボタンに目を向ける

そして携帯の画面の方へ視線をずらすと"流奈"の文字から目を反らさずそっと通話ボタンを押し、ゆっくりと携帯を耳元へと押し付けた。


「…………もしもし?」

「え!!奈月?…ちょっ………やっと出たーー!」

それはとても大きな声で思わず電話を耳から咄嗟に離してしまった。


さっきまでの躊躇していたことがまるで打ち消されるような第一声に、少しだけ安心しながらも、それでも私はいつものように流奈に声をかけることを躊躇ってしまう。

「ごめん」

流奈とは対照的な声で、自分にも聞こえないような掠れた声で返す。

正直言葉なんて出ない、何を話そうか悩んで答えが出る間もなく通話ボタンを押してしまったのだからただその一言だけを言うのが精いっぱいだった。


「生きてるんだか死んでるんだかも分からなかったよ!何してんの!ほんと!!!」

初めて流奈の怒鳴った声に私は電話越しでも体をビクンと反応させる。

黙り込んだまま、返事が出来ず長い沈黙だけが私達の間を静かに流れる。


「出来ることなら今すぐぶっ飛ばしてやりたい。」

きっとこの一年、流奈は友達不孝のこの私をぶっ飛ばしたかっただろう。
流奈に対してこんなことした女はきっと私だけしかいないと思った。

「………本当ごめん」

私は同じような返事しか出来ずにいた、言い訳なんて効かないことは重々承知の上だし、本当にもうこれ以上の言葉は見つからないのだ。

どんな怒りをぶつけられても、思い切り流奈に殴られたとしても仕方ない。

それほど、私は裏切りひどいことをしていたのだから。

流奈が気がすむまで怒ってくれた方が、むしろ私までも楽になれるそう腹をくくった。

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