トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜
そう、いつだって必要以上に、根掘り葉掘り聞いてこないのが流奈。
久々に連絡をとったというのに、久々に会ったというのに、不思議なのだ……
そんなことを一切感じさせない何かがある。
そしていつだってこうして笑いに変えてくれるのだ。
「ねぇねぇ食べたいな!その奈月が手に持ってるやつ〜ぅ♩」
手に持っていたドーナッツを指をさしてニヤリと笑っている流奈はやっぱり幼い母の顔をしている。
「あはははっ、流奈ってばいやしい〜!うん!一緒に食べよ!」
「では行きますか!」と流奈がベビーカーの車輪のストッパーを外すと、それをゆっくりと押す。
私はベビーカーの速度に合わせてゆっくりと、静かに歩き出した。
「あのさ、ベビーカー押してみてもいい?」
私は甘えるように荷物を持ったまま両手を合わすと、流奈の顔を覗き込む
ずっと待ち焦がれていた愛との初対面...…
昨日からドキドキしていた気持ちを抑えて、一番やりたかった事をお願いした。
「いいよ!安全運転で頼むよ?」
「はい!分かってますっっ」
「事故起こしたら免許取り上げで!!」私達はまた流奈の冗談に目を合わせて笑っていた。
流奈の大切な娘の愛は私にとっても大切な存在。
しっかりと力強くハンドルを握りゆっくりゆっくりと慎重に歩きだした。
「なんか奈月、ぎこちな~」
「だって初めてだわ、こうやってベビーカー押すの!!」
会わなかった期間がまるで嘘のように、私達はまたいつものように笑い合い、流奈の新居へと向かった。