トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜
「おじゃましま~す!!」
そう言いながら、玄関で靴を揃えて流奈の後に続くと、ただただびっくりしてしまった。
生活感の出ている部屋。
綺麗に整頓された愛のおもちゃやベビーに使うのであろう物たちが棚に揃えてある。
壁には沢山の愛の写真が貼られてて、それを見るだけでなんだか温かい。
いつか流奈の実家に遊びに行ったときの流奈の部屋を思い出すと同じ人が整理整頓しているとは思えなかった。
「そんなキョロキョロして~どうせ、ちゃんと家事出来てるのか半信半疑だったんでしょ~」
まさに図星……
その言葉に笑いで返すのが精いっぱいで、そんな私を見て「奈月ひど~っ!!」なんて笑って見せた。
流奈の相変わらずスレンダーな体型は健在だった。
見た目は、イケイケなヤンママ、それに相変わらず口紅の色は濃い紫。
あの頃とちっとも変っていない容姿の流奈に少しだけ胸を撫で下ろしたのは言うまでもない。
だが1つ...確かに違っていたんだ。
愛を見つめる流奈の表情は今までに見たことのないくらい柔らかくて、幸せそうで優しいママの顔つきをしていた。
「愛は自分の命より大切なの」
「え!?...自分の命より?」
「うん」
そう言いきった流奈は、寝ているままベビーカーから下ろした愛を抱いたままで、さらにぎゅうっと抱きしめていた。
華奢な腕のはずなのに、なぜかたくましく力強さを感じてしまう。
愛を見つめ無言が続く中、私の頭の中は疑問だらけだった。