トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜
流奈と再会後も歌舞伎町での生活を続けていた。
嘘つくことも遠ざかることもなく"七海"の日常をありのまま流奈へ伝えた。
『悔いのないよう、やりたいようにとことんやりな!』と背中を押してくれ、流奈はどんな私でも受け入れてくれた。
少し危険な匂いを感じさせ、深夜でも消えることがないネオンが輝く眠らない街で私は懸命に生きていたのだ。
だけど都内での生活はお金も必要で予想以上に自らの体を酷使し、若さゆえに無理を重ねてしまってた結果、体調を崩しがちになった。
そしてそれが元に戻るにはやはり時間が必要だっで……
仕事を長らく休まなければいけないと判断した時期にお店をやめて、あんなにいたくなかった地元へ戻った。
もちろん実家には戻らず、弥生先輩の祖母が所有するアパートを格安で借りそこでまた新たに生活を始めた。
地元に戻ることはかなりの覚悟がいるはずだったのに、案外簡単に踏み込めた自分がいて驚いた。
「ねぇ、奈月ちゃんとご飯食べてる〜?」
「大丈夫です」
地元へ戻ると流奈と会う回数も連絡も自然と増え近状を報告していた。
それと共に愛の成長も見させてもらっているけど、子供の成長とは早くてびっくりするのだ。
「たまに自炊もしてるから安心して!!……って流奈お母さんみたい」
電話の先でクスクス笑っている流奈の顔が目に浮かび私は微笑んだ。
「あ~ちょっと待った!!ごめん、奈月またかけるね!!あ~ちょっと、愛ってばーーー!!!」
そんな流奈の慌ただしそうにしている声を遠くに聞いて、私は微笑みながら電話を切る。
少し生活が落ち着いてきたころ私は大きな総合病院へ足を運んだ。
内科にかかっていたが、不眠症、過呼吸の症状を相談し、心療内科へ回してもらった。
向き合う事、それは昔じゃできなかった。
もう過去に振り回されたくないという決心だけで、何時間も診察されるのを一人で静かな廊下で待った。
必要な薬を処方され、ゆっくりとゆっくりと精神は安定してきた。
「勝手にやめたり、増やしたりせず必ず処方した通りに飲んでくださいね」
と、医師に念押しをされているとなんだか薬の強さを感じて怖くなっていたが神頼みのように私は決心して言われた通りに飲んでいた。