トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜
子育てをし始めてからの1年は、
今までの一年と比べ物にならないくらいあっという間に過ぎていく。
ついこないだまで洋服の着替えも手伝っていたのに、今ではどんどん一人でこなしていく華にどこか寂しくもありながら、一緒に年を重ねていける人生が私は幸せだった。
母親になってから、見かけは昔よりもだいぶ大人しくなっていったが、私にとっての夏という季節は胸が高鳴り特別な季節である事は変わらない。
朝いつものように華を見送った後すぐ家を出て海岸近くのレストランでこの日待ち合わせをしていた。
「誕生日おめでとう」
「そちらこそ、明日誕生日おめでとう」
流奈が大好きな海が見えるテラス席に座るとすぐにソフトドリンクで乾杯をした。
「ねぇ、写真撮ろう」
笑いながらも、少しでも若く綺麗にうつろうと
夢中になって写真を撮っていたのは、
30代の二人
私と流奈だったーーーー。
私のカメラに保存されてる写真は、
色彩豊かな風景、青空、海
にこやかに笑う自分や大切な友人、親友、
そして家族や可愛い子供たち……。
冷めきった瞳はもう過去のものとなった。
綺麗な物を見れば写真に納めて、大切な人に送りたくなって、美味しいものを食べれば、あの人にも食べさせたいなぁと喜びや感動を共有したくなっていた。
昔はどこか悲しく聞こえてたオルゴールの音や
切なく聞こえていた波の音も、心地よく癒されるようになっていた。
視界、聴力、、五感全てが変わっていった。
「はい!ちーず!」
カシャッーーーー!!!
「えーーー目ぇつぶってる~もう1回お願いーー!!」
「しつこいよ~流奈ぁ……!!」
「ハイチーズ!!!」
カシャッーーーー!!!
偽りのない本物の笑顔でスマホの画面に写っている。
そして私と流奈の胸元には丸いコインのネックレスが今もなお輝いていた。