トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜


次の日、学校で陽平は電話のことにも触れては来なくて、私に絡んでくることもなかった。

なんだか昨日、学校以外で話したことがまるで嘘だったかのような錯覚に陥る

つまらない授業をただ時間が過ぎることだけを祈って、私はまた家の手伝いがあるから真っすぐ家路についた。


その日の夜、昨日とだいたい同じ時間帯に電話が鳴った。


"え……まさか……"

「私が電話出るよーーー!!!」

そう言いながら、部屋を飛び出せば、姉の恵とぶつかりそうになって「ごめんっ」と手を合わせながら、慌てて受話器を取った。


「もしもし」

「陽平?どうしたの?」

「別に……なんだよ!用がなきゃかけちゃだめかよ?」

「いや、そういう訳じゃないけど」

「お前、どうしてそんな息切れしてんの?」


電話口でケラケラ笑ってる陽平に、とてもじゃないけど、陽平からの電話に慌てて出たなんて絶対に口が裂けても言えないと思った。


「うるっさいよ、してないよっ!!」

「あっそ!!」


そうまた笑いながら、今日の放課後にしたスケボーの練習の話を陽平は楽しそうに話し始めた。


「ねぇ?スケボーって楽しいの?」

「当たり前だろ!!怪我するけど、すげー面白い!俺1人で夜とか公園でやってる時もあるよ」

「え?夜?親に怒られないの?」

「あぁ……大丈夫」

「いいね!私も夜出て遊んでみたいなぁ」


夜の公園とかって今の時期気持ちがいいのだろうな~なんて考えている自分もいる。


「今度さ、練習してる公園来てみてよ!!」

「いや、無理だよ……門限あるからな」


私は返答に困った。
門限ももちろんだけど、それより聡の顔が頭をよぎる。


「門限?なんとか親に上手く言えば楽勝っしょ!」

「そうね……いつかチャンスがあったらね」

「おい!内田!絶対来る気ないだろ!」

「え~そんなことないよぉ~」


陽平に聞こえてしまうくらい大声で笑ってしまった。
確かに図星かもしれない、だけど少しだけ夜の公園に私も行ってみたいと思ったことは嘘ではなかった。

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