トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜


本当は……図星だった。


私は聡が好きだから、絶対に行けないと心の中で思っていた。

別に聡は、彼氏でもないし両想いなんかでもない。


だけど、自分の気持ちに嘘をつく気がして、そんなことは出来ないと思ってしまっている自分がいる。

「てか!本当ひっでーな!けど俺は待ってるよ」

陽平も私につられて笑いながら、その言葉を残した。

「え?」

「来るまで、待ってるよ」


その一言に、なんだか胸の辺りがキュッと締め付けられて、鼓動が速くなるのを感じてしまっている。

「え…………」

「なーんてな!お前のことなんて待つわけねぇ~だろっ」

どう答えていいのか、私が困っていると、その沈黙を簡単に破って陽平はおちゃらけてごまかした。


「んもー!明日覚えておきなさいよー!」

2人で大笑いして「また明日学校でね!」とお互い電話をきった。

昨日より、ほんの少しだけ長くなった電話のやり取り。



陽平は優しい

陽平の分かりやすい程ストレートなアプローチに嫌な気持ちにはならなかった。


それから、陽平はマメに連絡をくれて、聞いてもいないのに、自分の話をよくしてくれた。


電話のやり取りで、沢山笑わしてくれる陽平

バカなことばかり言う陽平

だけど私という人間に、ズカズカ入り込んでこない陽平

とても優しい陽平



夜に掛かってくる電話という2人だけの内緒の日課のおかげで、
私と陽平の距離は少しづつ縮まって行った。

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