海の底
「ようちゃん」

気が付くと深い海の底だった。

息苦しさはなかった。
ただ海底を漂っていた。

海面を見上げると遥か遠くに感じる。
もしも、これが死ならそれでもいいと思った。
そして、そうあってほしいと思った。

「ようちゃん」

紗枝の声?佳枝の声?もう分からない。
でも、彼女に伝えてあげたい。


君たちはやはりよく似ている、と。
 

その瞬間、少しずつ苦しくなってきた。
海面が急速に近付いてくる。
ついに浮かび上がり、激しく咳き込んだ。
頬が濡れているのは海のせいだけではない。
海面には朝日が差しこみ、そこに佳枝が浮かんでいた。

「紗枝…」

佳枝がか細い声で呟く。
言わなくても分かる、同じものを見ていたに違いない。

僕たちはいつも三人一緒なのだから。
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