エリート御曹司と愛され束縛同居
……どうして好きな人の縁談話をわざわざ聞かなくてはいけないの……?


悲鳴のような心の声に愕然とし、誤魔化しきれなった想いを皮肉にも悟ってしまう。


もう無理だ、もう自分を騙せない。


……遥さんが好きだ。


本当はずっとわかっていた。きっと最初から気になっていた。

どうしようもなく惹かれてしまう気持ちをとめられないと気づいていた。

それでも手の届かない人を想うなんて不毛な恋はしたくなかった。

こんな場所で気持ちを確信してしまうなんてどこまで私の恋は間が悪いのだろう。

手を伸ばせば、声をかければ届く場所にいるのに、本当の距離はとても遠い。

胸が潰れそうに痛くて悲しい。

けれど認めてしまった気持ちはもう撤回できない。今まで押さえつけていたせいか、身勝手な恋心はどんどん拡がって際限がない。

今日の訪問目的は縁談だと知っていたのだろうか。


私を同行させたのは、もしや自分への想いを諦めさせるため?


好きだと明確に言われてもいないのに、恋に落ちてしまった愚かな私を戒めるためなの? 


だとしたら正解だ。こんな場面を見せられて叶わぬ夢なんて抱けない。


だけどどうしたらいい? どうやって諦めたらいいのだろう? 胸を焦がしつくすほどのこの想いをどうやって押しこめたらいいの?


泣かずにいるだけで今は精一杯だ。

しっかりしなくてはいけない。私は秘書、公私混同をして情けない醜態を晒したくない。
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