エリート御曹司と愛され束縛同居
「申し訳ありません。お嬢様には私からお話をさせていただきます」

「いや、それには及ばない、私から話そう。私用で呼び出してしまって申し訳なかった」

気分を害した様子もなく口にする植戸様に副社長が言う。

「せっかく好意を寄せていただいたのにお応えできずに申し訳ありません」

「気にしないでくれ。こういう話はあくまで当人同士の気持ちが一番大事なものだ。おかしいと思ったんだよ。いつもは是川くんが同行するのに、今日に限って岩瀬さんを同行してきたからね」

苦笑いを浮かべる植戸様に穏やかな表情を見せる。


まさか、この展開すべてを予想していたの? 


その潔い覚悟というか決意に驚きを隠せない。本当にこの人は抜け目がない。

「……ふたりの幸せを祈っているよ。色々とうるさく言われるかもしれんがね」

落ち着いた声で言われて、そっと頭を下げた。

同情などではなく、桃子さんの気持ちを想うと申し訳なさが浮かぶ。

和室を包んでいた緊張感が少し緩んだその時、障子を隔てた廊下から微かな足音が聞こえてきた。
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