エリート御曹司と愛され束縛同居
「お久しぶりです」
副社長に向かって口を開く女性は本当に嬉しそうだ。彼はいつもと変わらない穏やかな笑みを返している。
「お仕事のお話をされていたのにお邪魔してしまって申し訳ありません」
そう言ってやんわり唇の端を持ち上げる姿は、まさに深窓のご令嬢そのものだ。
「岩瀬さん、長男のひとり娘の桃子です。桃子、こちらは九重副社長の秘書の岩瀬さんだ」
植戸様が紹介をしてくださり、私たちはお互いに挨拶を交わす。
正面に座る桃子さんを見つめる。
陶器のように白い肌に自然な赤みのある頬、背中半分ほどの長さの真っ黒な髪は艶々していた。
「九重副社長はこの岩瀬さんと将来を考えておられるそうだ」
前置きもせず単刀直入に植戸様が言うと、桃子さんは驚いたように瞬きをして小さく身じろぎする。
「……え?」
その声に僅かな動揺が混じる。理解できない、といったような表情が清楚な面立ちに滲む。
「桃子さん、大変申し訳ないのですが、このお話はお断りさせてください。大変光栄だと思いますが、私には決めた人がいます」
真っ直ぐに桃子さんを見据えて、一言一句区切るようにはっきりと言い切る姿に緊張で身体が強張る。
膝の上で握りしめた私の手が一瞬だけそっと握られた。向かい側に座るふたりからは見えておらず、驚いて隣を盗み見ると優しい目にぶつかった。
大丈夫だ、と言われているような気持ちになり、緊張が少し解けていく気がした。
副社長に向かって口を開く女性は本当に嬉しそうだ。彼はいつもと変わらない穏やかな笑みを返している。
「お仕事のお話をされていたのにお邪魔してしまって申し訳ありません」
そう言ってやんわり唇の端を持ち上げる姿は、まさに深窓のご令嬢そのものだ。
「岩瀬さん、長男のひとり娘の桃子です。桃子、こちらは九重副社長の秘書の岩瀬さんだ」
植戸様が紹介をしてくださり、私たちはお互いに挨拶を交わす。
正面に座る桃子さんを見つめる。
陶器のように白い肌に自然な赤みのある頬、背中半分ほどの長さの真っ黒な髪は艶々していた。
「九重副社長はこの岩瀬さんと将来を考えておられるそうだ」
前置きもせず単刀直入に植戸様が言うと、桃子さんは驚いたように瞬きをして小さく身じろぎする。
「……え?」
その声に僅かな動揺が混じる。理解できない、といったような表情が清楚な面立ちに滲む。
「桃子さん、大変申し訳ないのですが、このお話はお断りさせてください。大変光栄だと思いますが、私には決めた人がいます」
真っ直ぐに桃子さんを見据えて、一言一句区切るようにはっきりと言い切る姿に緊張で身体が強張る。
膝の上で握りしめた私の手が一瞬だけそっと握られた。向かい側に座るふたりからは見えておらず、驚いて隣を盗み見ると優しい目にぶつかった。
大丈夫だ、と言われているような気持ちになり、緊張が少し解けていく気がした。