エリート御曹司と愛され束縛同居
「ただいま戻りました」

「お疲れ様」

帰社後、すぐに副社長の元へ向かった是川さんのほかには津守さんしか室内にはおらず、自席に腰をおろした途端に声をかけられた。

「きちんと話はできた?」

是川さんと津守さんは今回の訪問の本当の目的を知っている。なぜなら私はこのふたりに同行するよう指示説明を受けたからだ。

「……動揺しておられました」

どう伝えたらよいかと逡巡しつつも主語を端折って端的に答えると、有能な先輩はふうと溜め息を吐いた。

誰の話をしているのか察して理解してくれていた。

「そうでしょうね、あの方、本当に副社長が大好きだもの。自信もあったでしょうから」

「同行してよかったのでしょうか……」

今さらな話だとわかっていても口に出さずにはいられなかった。

「当たり前でしょう。あなたが姿を見せないと絶対に納得されないわ。それがわかるから今回の件は副社長も室長も前々からずっと検討していたのよ。だけど副社長はあなたを人前に出したくないと言って頑として譲らなくて難航していたの」

呆れたように言われて納得する。

「そうですよね、私みたいな新人では会社の品格が……」

「嫌だ、違うわよ! 自身との結婚を熱望しているご令嬢の前に立たせたくなかったのよ。副社長は岩瀬さんをとても大切に想っているから、傷つけたり悩ませたくなかったの。恋人と公言していなくても態度を見ていれば一目瞭然だもの。少なくとも秘書課では周知の事実よ」
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