エリート御曹司と愛され束縛同居
「あまり時間はないけど、とりあえずどうぞ」

急いで片付けた部屋へ入室をすすめる。

「へえ、圭太から聞いてはいたけど本当に豪華な部屋だな」

室内に足を踏み入れた兄の感嘆の声に頷く。

私も最初は度肝を抜かれた。

それにしても兄にまで報告しているなんて……本当に幼馴染みは頭がよく回る。

その時、まだ圭太に遥さんと正式に付き合うようになった報告をしていないと気づき、後で連絡しなければと心のメモに書きこんだ。


「元気そうで安心したよ」

時間がないのだろう、コーヒーを淹れようかというとすぐに出るからと断られた。


うまくやり過ごせたと胸を撫でおろしていると、急に兄の纏う雰囲気が硬質なものに変わった。

「……澪、独り暮らしだって言ってたよな?」

「え、うん、もちろんそうだよ」

「……恋人もいないって言ってたよな?」

「う、う……ん」

「だったらなんでふたり分の食器があって男性用の洗濯物があるんだ?」

鋭い指摘に声を失う。バルコニーに向けられた兄の視線から逃れられそうにない。


「澪」


威圧感のある声で名前を呼ばれビクリと肩が跳ねた。

こうなっては誤魔化せないと観念して正直に事の次第を報告した。


いずれは話さなければと思っていたし、下手に取り繕っても勘繰られるだけだ。なにせ兄は変なところで勘が鋭い。
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