エリート御曹司と愛され束縛同居
「……へえ、圭太の言う『遥さん』が男で、急遽帰国して同居する羽目になってしかもお前の上司で恋人」

淡々と事実確認をする声が恐い。

「うん……」

「なんでお前はそんな大事な話を今まで隠してたんだ! しかもよく知りもしない男と同棲してるなんてどういうつもりだよ? どれだけ危機感がないんだ、なにかあってからじゃ遅いんだぞ」

「も、元々は同居だったし、それも無理に私が頼み込んだの。遥さんを悪く言わないで」

怒りを露わにする兄に言い返す。

予想通りまったく納得していない。

遥さんをこの場に呼び出せとまで言い出す始末だ。

心配してくれているのはわかるけれど、頭ごなしに悪い人間だと決めつけないでほしい。

そう願って何度もこれまでの経緯を丁寧に説明したのだが火に油を注ぐようなもので、心証はとても悪いものになってしまった。

「だったらなんで挨拶に来ない? 付き合っているだけならまだしも上司で同棲相手だろ? 報告に来るのが普通じゃないのか?」

父に似た切れ長の鋭い目で睨まれる。

「……挨拶に行くって何度も言われたの、でも私が断ったの」

「なんでだよ?」

「……結婚するつもりはあるのか、とか絶対聞くでしょ? それに同居を反対しそうだから……」

私を結婚させようと長年躍起になっている兄なら聞きかねない。

尻すぼみになりながら返答すると、はあ、と疲れたように大きな溜め息を吐かれた。
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