エリート御曹司と愛され束縛同居
どう返事をしたらよいか逡巡する私に、車は会社の真裏にある公園前の駐車場に停めてあると説明された。

あまりよく知らない相手、しかもお客様の車に乗り込むと言うのはいかがなものかと躊躇していると、しびれを切らしたようにその公園で話しましょう、と言われた。

公園といってもベンチがふたつに小ぶりな花壇があるだけの小さな空間だ。

この辺りはオフィス街なのでこの時間帯にここを訪れる人はほぼいない。


共に歩いて公園に向かう間、私たちは無言だった。

説明された通り、駐車場には車が停まっていて、車の脇に立つ運転手らしき男性に頭を下げられた。

頭を下げ返し、そのまま公園内に足を踏み入れると、意外にも周囲のビルの照明や街灯で明るい場所だった。

向かい合い、足を止めると最初に口を開いたのは桃子さんだった。

「……岩瀬さんが九重副社長の恋人だとわかっています。でもどうしても諦めきれないんです。あんなに紳士的で素敵な男性に出会ったのは初めてでした」

声は震えていてとてもかぼそかったが、街灯に照らされた頬はうっすら上気して赤くなっていた。

予想していた通りの内容に胸が苦しくなる。

縁談話を懇願したくらいだし、並々ならぬ想いがあるのだろうとわかる。

真っ直ぐで迷いのない気持ちは色々なしがらみに雁字搦めになっている私にはとても眩しい。
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